【地域連携活動】サッカーしながら防災を学ぼう!ベガルタ防災サッカー教室 in富谷!富田C.C&梁C.Dも、大人も子どももみんな大満足の一日でした!
レポート
2025.10.15
2025年9月27日(土)、富谷市役所の市役所前広場にて「アイリスオーヤマ presents ベガルタ防災サッカー教室」が開催されました。このイベントは、サッカーの技術を学びながら、防災意識を高めていこうと、防災教育研究をしている東京大学准教授小田先生が監修し、東日本大震災から10年にあたる2021年から始められた新しいスタイルのサッカー教室です。今シーズンは初めての開催となり、ベガルタ仙台からはスクールコーチの癸生川コーチ(ケブコーチ)と本間コーチ、さらに梁勇基クラブコーディネーター(C.D)と富田晋伍クラブコミュニケーター(C.C)がゲストコーチとして指導します!
この日は、吸い込まれそうなほど鮮やかな青い空と爽やかな風、広場いっぱいに広がる青々とした芝生という、サッカー教室にはぴったりのシチュエーション!イベント開始は午前10時半でしたが、受付開始の9時45分を待たずに、多くの親子や友達同士といった参加者が続々と訪れ、およそ70名が集まりました!
初めに、このイベントのために駆けつけてくださった富谷市の若生市長から、「みなさんの思いが天に通じて秋晴れの中での開催となりました。富谷市は令和5年度の6月にベガルタ仙台さんとのスポーツに関する連携協定の締結を行って以来、さまざまな取り組みをさせていただいております。今年の6月には2年ぶりに、ユアスタでのホームゲームの日に参加させていただき、防災サッカー教室も、一昨年に続いて今年2回目です。通常のサッカー教室と違って、防災というのをサッカーを通して学ぶということで、なかなかこういう経験はできないと思います。今日はみなさんで防災を考えながらサッカーを学んでいただく貴重な機会ですので、くれぐれもけがのないように楽しんでください!」とのお話があり、続いて富谷市の二階堂教育長からも「今日はいっぱい楽しんでください!」とあいさつがありました。
さらに今回防災サッカーを指導する4人のコーチ、癸生川コーチ、本間コーチ、梁C.D、富田C.Cの紹介がありました。
梁C.D「仙台も2011年に震災がありました。もしかしたら経験していない子どもたちもいるかもしれないですが、震災というのはいつ来るかわかりません。
学校で学んでいると思いますが、今日は正しい知識を身につけて、万が一のときに正しい行動を取れるようにみんなで学びながら、サッカーを楽しみながらやっていきましょう」
富田C.C「震災というのはいつ来るのかわからない。そこで準備というのがいかに大事かというのを、僕自身も経験して感じたので、ぜひ今日も少しでも、特に子どもたちは頭の中に残るような、そしてサッカーも楽しいなと思える時間にしてもらえればと思います!」
この日は本当に、みなさん楽しんでくださいよ、と用意されたかのような防災サッカー日和。
早速ウォーミングアップを兼ねて、手つなぎ鬼ごっこからスタートです。まずはビブスの色でチーム分け。ルールはペアで手をつないで、追いかける側も逃げる側も絶対に走らないこと。鬼にタッチされたら、ペナルティとしてその場で回転ジャンプをします。
最初はコーチ4人が鬼となったため、4人から逃れるだけでよかったのですが、次はビブスの色の赤チームとピンクチームが鬼となり、鬼が大増員!その中で鬼につかまらないようにしようとなると、混雑したところに逃げてしまったり、逃げることに夢中でつい走り出したりする参加者も。さらに手をつないでいるため、二人のタイミングも必要となっていました。決められたスペースの中での手つなぎ鬼ごっこは意外と苦戦だったようです。
絶対に走らない鬼ごっこの後、全員が集合して、今の鬼ごっこを振り返ります。走らない鬼ごっこは、避難する際の注意と同じで、みんなが走って逃げるとぶつかってけがをするから、という意識づけのための鬼ごっこでした。
続けてケブコーチが子どもたちに対して「学校の避難訓練で習っていることはなんですか?」と尋ねると、子どもたちからはすぐに「おはしも」の言葉。「おはしも」とは何かをここで改めて説明すると、
お「おさない」
は「はしらない」
し「しゃべらない」
も「もどらない」
です。
すると、ケブコーチはさらに話を進めます。「鬼ごっこのとき、何がいない場所に逃げたら安全でしたか?」
子どもたちが口々に「鬼!」と答えると、「鬼がいない場所、実際の地震などでは危ないところから逃げますよね。実はおはしもには続きがあるんです」とのこと!おはしもは、おはしも、じゃないの?と筆者も疑問に思ったのですが、今回指導に参加してくださった富谷市防災安全課危機管理監高橋さんから、意外な言葉が出ました。それは「ち」の一文字。
すると子どもたちからはすぐに「ちかづかない!」との言葉が出てきました。これまでの防災サッカーは「おはしも」だったのに、「ち」とは!?
高橋さんによると、「おはしも、までは学校で避難する際の標語として習ったと思いますが、ここ最近、『ち』ちかづかない、ちかよらない、というのが加わりました。地震が起きたときに倒壊したところに、『どうなってるんだろ』と近づいてまた地震が起きたらそれが崩れてきます。そういったことがないように、おはしもに続いて『ちかづかない』という言葉が最近言われていますので、ぜひ覚えてください」とのこと!確かに少しの好奇心と油断で近づいてしまうことはありえないことではない危険な行為ですね。防災は知識のアップデートが重要と実感しました。
続いて、参加者の子どもたちの中には東日本大震災を経験していない子どもたちがほとんどの中、震災を経験した富田C.C、梁C.Dからは体験談が伝えられました。
富田C.C「当時は、練習が終わって自宅にいました。次の日がホーム開幕戦ということで、自宅でゆっくりしていたときに大きな地震が来ました。揺れが長く、強かったので、とりあえずテレビを押さえてじっとしていましたが、地震が収まらず、どうしていいかわからなくなり、外に逃げました。外でしばらく立っていたのですが、『あっ!携帯、財布!カギもない!』と気づいて、急いで走って家に戻ってしまいました。
当時は何も知識がなく、自分のその行動で、もしかしたら戻ったときに建物が崩れて命がなくなっていたかもしれませんでした。今のみんなはそういうのを学校で学んでいて、大事なことだと思うので、ぜひ『おはしもち』を意識しながら生活してもらいたいと思います」
梁C.D「当時僕は車を運転していて、急に車が左右に大きく動いたので、『これは何かがあったのかな』と、あの震災の瞬間を迎えました。家族が家にいたのですごく心配になって、すぐに自宅に戻ったのですが、家の中は食器やコップが倒れてぐちゃぐちゃになっていました。これは本当に危ないなと思って、車の中で避難していたのですけど、自分も自宅がどうなっているのかというのがすごく心配になって、戻ってしまいました。
それまで大きな地震というのを僕は経験していなかったので、何が正しい行動なのか、何をしてはいけないのかというのは、そのときは無知でした。とにかく気になるからと、してしまった行動が、今振り返るとたくさんあります。
『ちかよらない』という言葉がありましたが、当時、余震が続いていたので、また大きい地震が起きたときに建物が崩れてしまう危険性がありました。僕自身も間違った行動だったなと今は反省してます。
今日こうして『おはしもち』という知識を身につけることによって、次に起きたときに正しい、安全性の高い行動がとれると思いますので、大人の方も『おはしもち』を一緒に学んでいってほしいなと思います」
震災に限らず、台風や豪雨などの際にも危険な場所に近づいたことで事故に巻き込まれる話を耳にしますが、まさにお二人の話も事故に巻き込まれる恐れもあった体験でした。
災害時には「少しだけなら大丈夫」「自分は巻き込まれない」と、目の前の危険を過小評価してしまう「正常性バイアス」が働いてしまうと言われています。さらに大人の我々は過去の経験をベースとして「このくらいなら大丈夫」と判断しがちですが、地震はもちろんのこと、台風や豪雨も過去とは比較できないほど近年強力になっています。宮城県各市町村のウェブサイトでは、ハザードマップや防災マップが公開されていますので、どの場所が危険かというのを確認して、この「おはしもち」も常に頭にいれておきたいものですね。
防災の知識を身につけたら、いよいよサッカーの練習に入ります。さきほどに続いて手をつなぎながら安全で広い場所を探しながらのドリブル練習と、足の内側を使って正確なパス練習。梁C.Dと富田C.Cのお手本では、人がいないところを見つけて声をかけたり、手で方向を示したりしながらパス交換をしています。二人で協力して安全な場所を探すというのがポイントのようです。
そして最後は子どもたちお楽しみの試合です。ペアで手をつないだままの試合に続いて、いよいよ大人vs子どもチームの本気サッカー!大人たちは子どもたちの保護者である場合がほとんどなので、やさしく手加減しながら子どもたちが得点するという場面もありつつ、意外と大人たちも容赦せず子どもたちを交わし、フェイントをし、得点を決めるなど、結構本気な試合が各チーム繰り広げられていました。暑くもなく寒くもなく、青空のもと、芝生でのサッカーという好条件で、みんな思い思いにサッカーを楽しんでいるようでした。
最後に防災安全課危機管理監の高橋さんからもう一度、おはしもちを覚えて行動すること、地震の際は危ない場所から離れること、下にもぐるような机などがなかったら、揺れても動かされないようなだんごむしのポーズをとって頭を守ること、をおさらいとしてお話しをされた後、参加者全員で選手のサイン入りシャツをかけてじゃんけん大会をして、今日のベガルタ防災サッカー教室は終了しました。
市内から参加した小学1年生の男の子は、小学4年生のお兄ちゃんと2歳の妹さんとおかあさんとで参加。なんとおかあさんがじゃんけん大会で奥山選手サイン入りシャツをゲット!朝から、ご家族みんなでじゃんけんに勝つ練習をしていたという仲よし家族です!「おかしもちのことがおもしろかった」と男の子は楽しそうに話してくれました。
同じく市内から参加の2組のご家族は、おかあさん同士が仲よしというのに加え、お子さんたちが同学齢。ソシオファンクラブ会員のおかあさんが今回のイベントを知り、誘って2組で参加したとのことですが、小学校1年生の男の子たちが名コンビと言えるほど元気そのもの!インタビュー中もカメラに向かって思いっきりアピールしてくれました!防災サッカーへの参加は初めてとのことで、「サッカーと防災ってどう学べるのかな」と思い参加したところ、「なるほど!」と思うことが多く、楽しむことができたとのことでした。
また、今回の防災サッカーを担当してくださった富谷市教育委員会生涯学習課の小嶋さんも「天候にも恵まれて多くの市民の方に参加いただき、大変うれしく思っております。2年前も防災サッカー教室を開催していただきましたが、今回はさらに防災の意識の向上を図るために防災安全課の危機管理監からも防災の話をいただいて、より市民の方の防災力向上につながったのかなと思っています」と、お話しくださいました。
——富谷市で、久々の防災サッカーを行った感想は?
天気にも恵まれて、すごくいい環境でやれたと思います。
富谷市のみなさまに改めて感謝したいと思いますし、たくさん今日は集まっていただいたので、すごくいい時間になったと思います。
——防災サッカーに参加されて、「防災」という言葉もだんだんインプットされてると思いますが、ご自身で心がけていることは?
昨年から防災サッカー参加させていただいて、今日は「おはしもち」も学べました。実際に防災サッカーを行ってみると、学校で学んでる子どもたちが多いなという印象の一方で、大人のみなさんは、初めて「おはしもち」を聞いた方もたくさんいらっしゃるというのは改めて感じました。こういう活動を通じて、「おはしもち」というワードを頭の中に入れていただけながら、日常生活を送っていただきたいですし、そういうきっかけになれば、よりいいかなと思います。
——久々の防災サッカーでしたね
そうですね、この秋晴れ!会場が芝生でしたし、すごい広々としていて子どもたちもすごいはしゃいでいて!
防災サッカーは、普段震災に対してどれだけ準備しているかということや、震災が起きたときの行動、何が安全で何が危険かっていうところも含めて、サッカーと一緒に少し勉強するような教室ですが、一番は本当にサッカーを楽しんでもらうというのが僕らのやりがいでもあるので、そういった意味ではすごく楽しみながらも防災の知識というのを、子どもたちも含め保護者の方の頭にも残ったんじゃないかな、と思います。
——防災サッカー何度か参加されて、日々防災について意識することはありますか?
本当にいつ起きるかわからないっていう状況で、僕も経験して起きてから何かをするっていうのは本当に命の危険にかかわってくると思うので、そういう意味では非常用バッグは準備しています。自分の子どもたちも学校で、震災が起きたときにどういう行動をするかというのも家族で話してくださいと言われているようで、そういうことも家族で話し合いながら生活するようにしています。
——今シーズン初の防災サッカー、かなり盛り上がった感じでしたね
一番は防災についてサッカーを通して学んでいただけたら、というのと、今回梁さんと晋伍さんに来ていただいていたので、お二人の震災時の経験を踏まえて、何が大事で何が気をつけなきゃいけないというのを子どもたちと大人が理解できたのがよかったのかなと思います。
——おはしも、ではなく、新たにおはしもちでしたね
僕も「ち(ちかづかない)」は初めて知ったことだったのですが、近年の日本全国の災害、確かにそういうケースは非常に多いんだなっていう、近よらないっていうことの重要性が今回僕も理解できたので、僕自身の防災の今後の経験に生かしていけたらなと思います。
——ケブコーチ自身でも意識していることはありますか?
日常的にはまずはどこに逃げたらいいのか、あとは家族の安全、家族がどこにいたら安全なのかというのを気にしながらいつも僕も気にかけて意識しています。
——今後も防災サッカー続くと思いますが、どういったところを特に教えていきたい?
まずは防災の基本的な「おはしもち」が重要だよということと、あとはサッカーと防災がリンクしているので、どこが安全でどこが危ないというのを常日ごろから理解して、それを次回以降もできればいいかなと思っています。
本当にこの日は気候にも恵まれ、天然芝という子どもたちがのびのびとサッカーができるスペースで、今シーズン初の防災サッカーには最高の一日でした。ちなみにこの富谷市役所前の広場は富谷市民の方以外でも利用できるそうです。もちろんスポーツをするだけでなく、のんびりくつろぐのもOK。安全やマナーに配慮しつつ、富谷市内観光も兼ねて訪れてみてはいかがでしょうか?
この日の様子はSOCIO MAGAZINE YouTubeでもアップしています。今シーズン初めて行ったベガルタ防災サッカーを覗いてみて、ぜひ次回参加してみてください!
(by 内田明子)