つかみかけたプレミア参入を逃すも貫いた「戦う姿勢」~ベガルタ仙台ユースプレミアリーグプレーオフレポート

 2019年4月から10月にかけて行われた「高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2019東北」。ベガルタ仙台ユースは3位となり、2位のモンテディオ山形ユースとともにプレミアリーグプレーオフ出場権を獲得した(優勝した青森山田高セカンドはプレーオフ出場権無し)。2年連続5回目の出場となるが、今回こそプレミアリーグ参入を果たそうと、選手・スタッフたちは最善の準備をし、クラブからのバックアップを受けて大会に臨んだ。

 12月13日に行われた1回戦の対戦相手はプリンスリーグ関西優勝の阪南大高。前半は相手にボールを持たれる場面が目立ったが、選手たちは激しく球際で戦い、2020シーズンからトップチームでプレーするGK小畑裕馬(3年)も積極的に声を出し、ゴールを許さなかった。「(佐藤)潤とか(高橋)拓とか、(佐々木)勇輔、ツノ(角田拓海)(4人ともDF、3年)がゴール前で体を張ってくれました。ゴールを守る仕事は今回そんなに無くて、チームをどう盛り上げるかに専念できました」とシュートコースを限定してくれた4バックの奮闘を称えた。そして延長戦突入かと思われた89分佐々木のコーナーキックからMF工藤真人(3年)がヘディングシュートを決め、1-0で劇的勝利を挙げた。

 迎えた12月15日の2回戦。対戦相手は日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会で準優勝したサガン鳥栖U-18。2019シーズンのJ1リーグで29試合に出場したMF松岡大起(3年)もメンバーに名を連ねる強敵相手だったが、ベガルタ仙台ユースの選手は阪南大高戦同様、攻守に奮闘。球際での激しい守備でボールを奪ったら、すぐにゴールを目指した。そして53分FW吉田騎(2年)のドリブル突破からチャンスが生まれ、冷静に千葉が丁寧に落としたボールを受けた工藤がミドルシュートを決めた。その後は反撃の勢いを強めた鳥栖U-18の攻撃をはね返し続け、ついにアディショナルタイムを迎えた。勝利が見えかけていたが、90+2分警戒していた松岡にゴールを決められてしまった。そして延長前半、93分に相手FW秀島悠太(3年)にミドルシュートを決められ逆転。ベガルタ仙台ユースの選手は最後の最後まで諦めずにゴールを目指したが、得点を奪えず1-2で敗戦。つかみかけていた勝利、プレミアリーグ参入が手からこぼれ落ちた形での敗戦に、選手たちは号泣し、大きな悔しさを味わった。

 壱岐友輔監督も「クラブユース選手権で準優勝している鳥栖さんに対してガチンコで前から勝負に行って、我々のプレースタイルである『堅守賢攻』を全面に出し、全員がハードワークして勝負に行こうと話をした中で、本当に選手が90分、そして、延長の中でよく戦ってくれたと思います。選手たちのパフォーマンスもすこぶる良く、それだけに負けた悔しさはいつもよりも大きいです」と素晴らしい戦いができていただけに、悔しさを隠さなかった。それでも「ギリギリの中で勝負する重要性を改めて感じました。選手はこれ以上の力を出すのは酷なくらい一生懸命全てを出し切ってくれたと思います」と全力を出し切った選手を称えた。主将のMF千葉武(3年)も「悔しいですけど、自分たちの持っているものは全て出し切ったので、悔いはありません。走力・球際・切り替えもしっかりできました。最後失点しましたが、やりきったかなと思います」と全力を出し切っての結果を受け入れ、前を向いた。

 プレミアリーグ参入は次世代に託された。主将の千葉は「まず、この景色を忘れないことです」と語る。2試合とも先発出場したMF鈴木史哉(2年)は「3年生の悔しい思いも背負って、来年自分たちの手でプレミアリーグ参入を決めたいと思います。自分たちの代は弱い代、と言われていますが、来年はチーム全員で攻撃したり守備したりして、全員の力で戦っていければと思います」と語り、2020シーズンへの決意を新たにした。

 走力で相手より勝り、球際で激しいプレーを見せ、素早い攻守の切り替えがベースとして、粘り強く戦う姿勢を最後まで見せ続けるスタイルを2試合とも貫いたベガルタ仙台ユース。こうした戦いぶりからベガルタ仙台アカデミーの今後の方向性も見えてきた大会となった。2021シーズンのプレミアリーグ参入を目指し、2020シーズンもベガルタ仙台ユースは熱く激しく戦い抜く。