残留争いの大一番・大分戦。準備の成果を出せず敗戦

 10月17日、明治安田生命J1第32節・大分戦の舞台である昭和電工ドームに到着したベガルタ仙台は、ウォーミングアップのためにピッチに出たときに圧巻の光景を見た。
 スタジアムのアウェー側のスタンドが、ベガルタカラーに染まっていた。アウェーの地まで駆けつけてくれた仙台サポーターが、ゴールドとブルーのクラブカラーで座席を飾り、ビッグフラッグを掲げてチームを出迎えた。
 J1残留をかけた、近い順位同士の直接対決。この大事な一戦を前に、会場の熱気は高まっていた。

 チームもこの大一番に向けて、2週間の期間の中で準備を進めていた。練習や練習試合で調子を上げて台頭してきた選手もいた。たとえば、10日の練習試合・いわてグルージャ盛岡戦では佐々木匠が2得点。「前線の選手としては点にこだわっていきたいし、しっかり勝利を意識して戦います」と大分戦に向けて意気込んだ。一時は調子を落としていた真瀬拓海も、この準備期間で「守備のかたちを整理し、攻撃面ではサイドの突破からクロスへのかたちに取り組んできました」と調子を上げてこの試合に臨んだ。
 そして迎えた大分戦。待っていたのは、厳しい展開だった。仙台は立ち上がりからボール保持に長ける大分に主導権を握られ、自陣でプレーする時間を長く過ごす。練習ではイメージを合わせていた前線からのプレッシャーが相手に噛み合わず、ボールを奪えないまま深い位置まで運ばれていた。ただし、守備陣が奮闘し、シュートは45分間で1本しか打たせず。一方で仙台はシュートが打てないまま前半を終えた。
 0-0で始まった後半では、まず仙台の方がチャンスを迎える。48分には加藤千尋が右サイドからペナルティーエリアに迫るなど、高い位置でのプレーが増えてきた。「前半とは打って変わって相手陣内でのプレーができた」と手倉森誠監督も手応えをつかんでいたが、そこでひとつ落とし穴があった。50分、全体が押し上げていたところで、事前に警戒していた大分のロングボールが仙台最終ラインの裏に送られる。「自分の裏に抜けられたので、自分がもうちょっと早くラインダウンをしていたら間に合っていた」とアピアタウィア久は悔やむ。抜け出した相手FW伊佐耕平のシュートはヤクブ スウォビィクが防いだものの、こぼれ球には仙台の選手より早く渡邉新太に詰められてしまった。福森直也は「一瞬ボールを見てしまった」と帰陣が遅れたことを反省した。
 1点を取り返したい仙台だったが、焦りがそれまでの守備に綻びを生む。60分にPKを与え、再び渡邉に決められてからはそれが顕著になった。0-2とされた後に、ベンチは次々交代カードを切り、攻撃での打開をはかる。佐々木や皆川佑介のように調子を上げてきた選手も投入されたが、シュートを打つまでには到らなかった。

 仙台は練習の成果が発揮できないまま90分を終え、0-2で敗戦。「トレーニングをしてきたビルディングアップ、背後を取ることに対してはいい準備ができていたのですが、いざゲームになったら、相手のちょっとしたプレッシャーに慌てて、ミスパスを繰り出したり、しっかり前につけられなかったりというシーンがものすごく多すぎた」(手倉森監督)ことで大事な試合を落としただけでなく、最下位に落ちてしまった。
 終わっていない、ということは事実としてあります。どうやって全体で守備をするのか、どうやってボールを前に運ぶのかというところを、試合によって狙いも変わってくると思いますけれども、そこをもっとはっきりさせて、勢いを持って戦わなければいけない」と、福森は先を見る。アピアタウィアは大分の地に駆けつけてくれた仙台サポーターに対し「非常に感謝していますし、その期待に応えられるようにがんばりたい」と思いを口にした。ホームに戻り迎える次節で、今度こそ勝利をつかみたい。

(by 板垣晴朗)