【ユース】第49回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会、大躍進見せ、過去最高成績の準優勝

自らアクションを起こす姿勢で快進撃見せる

 「第49回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会」が7月31日閉幕した。東北第1代表として21年連続28回目の出場となったベガルタ仙台ユースは、大躍進を見せた。
 7月22日のグループステージ初戦はプレミアリーグEASTの強豪川崎フロンターレU-18との対戦となったが、立ち上がりから全く臆することなく攻める姿勢を見せ、前半終了間際にFW古屋歩夢(3年)のシュートのこぼれ球をDF古川柊斗(3年)がゴールに押し込み先制に成功した。後半も主導権を握り続けて戦い、1-0で勝利した。
 翌23日の2戦目はプリンスリーグ九州上位のV・ファーレン長崎U-18と対戦。雷の影響で45分遅れでキックオフとなったこの試合。2日連続の試合ということもあり、しっかりゲームコントロールしながら戦い、29分前線からのプレスでボールを奪うと、古屋からパスを受けたMF永守大宙(3年)のゴールで先制に成功した。試合終盤会場の照明が落ち、27分間中断するアクシデントもあったが、1-0で連勝した。
 25日のグループステージ最終戦はプレミアリーグWESTの強豪ファジアーノ岡山U-18と対戦。引き分けでもグループステージ突破となる試合だったが、過去2戦よりも強度の高い相手に苦しみ、前半相手に先制を許してしまう。しかし後半修正を見せ、47分MF浅尾涼太朗(3年)のクロスから古屋のゴールで同点に追いついた。このまま1-1で逃げ切り、グループステージ突破を決めた。

(FW古屋歩夢(3年))

 翌26日の準々決勝は、昨年末プレミアリーグプレーオフで大敗した京都サンガF.C.U-18と対戦。前半は高い強度で入った相手に対し、シュートを打てなかったが、後半は修正し、65分FWピドゥ大樹(3年)とのワンツーで抜け出した永守がゴールを決めて先制。しかし、その後同点に追いつかれ、さらにDF今野翔太(3年)が退場となるが、何とか1-1で後半を終え、PK戦に突入。互いに1人ずつ失敗した後の3人目、相手のPKを止めたのはGK渡邊航聖(2年)。4-2でPK戦を制し、MF佐々木匠、DF小島雅也らを擁して戦った2015シーズン以来10年ぶり2回目の準決勝進出を決めた。
 舞台を群馬県から神奈川県の三ツ沢陸上競技場に移して行われた29日の準決勝は、プレミアリーグWESTの強豪名古屋グランパスU-18。前半は立ち上がり4分にMF池田悠一(3年)の縦パスを受けた古屋がゴールを決めて先制。さらに27分にはPKを獲得し、古屋が落ち着いてPKを決めて2点のリードを奪った。後半は相手の猛攻を受けたが、ここで相手に立ちはだかったのがGKの渡邊。度重なるファインセーブを見せチームを救い、失点を許さず2-0で勝利。ついにチーム史上初の決勝進出を果たした。どの試合も攻守で自分たちからアクションを起こすというスタイルを体現し、快進撃を見せることができた。

(GK渡邊航聖(2年))

決勝は完敗、公式戦無敗は17で途切れる

 31日の決勝は、多くのベガルタ仙台サポーターがニッパツ三ツ沢球技場に駆けつけ、今大会初優勝に向けての機運は大きく高まった。対戦相手は鹿島アントラーズユース。2023シーズンのプレミアリーグプレーオフで0-7と大敗を喫した相手で、現在プレミアリーグEASTで首位を走る、高校・ユース年代トップクラスの強豪チームだ。
 こうした相手にも自分たちからアクションを起こし、主導権を握ろうと挑んだゲームだったが、前半から相手の強度と技術に対し劣勢を強いられ、相手に決定機をつくられる厳しい展開となってしまい、18分相手のエースストライカーで中学時代古屋と同じチーム(FC多摩ジュニアユース)の1年後輩だったFW吉田湊海(2年)のシュートのこぼれ球を拾ったMF福岡勇和(2年)に先制ゴールを許した。さらに37分にはクロスからFW髙木瑛人(1年)にゴールを許し、0-2で前半を折り返した。後半も53分にクロスからMF中川天蒼(3年)にゴールを決められた。結果的に試合通じてMF稲木康太(3年)と古屋のシュート2本に抑えられ、0-3で完敗を喫し、大会準優勝に終わった。
 試合後声援を送り続けたベンチ外選手や選手の保護者、サポーターから、選手たちは大きな拍手を受けた。キャプテンDF永井大義(3年)は観客へのあいさつの後泣き崩れた。全力を出し尽くしたが、届かなかった頂点への思いがあふれ出たのだろう。
 4月のプリンスリーグ東北開幕から、公式戦無敗を続けてきたチームは、この試合で初の公式戦敗戦を喫した。それでも無敗記録は17(プリンスリーグ東北9試合、今大会の東北予選3試合、今大会5試合の計17試合)まで伸ばし、チーム史上最高成績の準優勝という結果は胸を張れるものであった。

準優勝にも満足せず、次の目標を見据える

 決勝の後行われた監督会見で、加藤望監督は決勝について振り返り、「仙台から本当にたくさんの方が応援に駆けつけていただいて、その中で選手たちに気持ちを出して戦おうと話して臨みましたが、なかなか普段通りのことができない部分も多々ありました。徐々に(普段通りのことが)出せている部分もありましたが、やっぱりアントラーズさんの力強さだったり、うまさだったり、そこに今日は完敗だったなと感じています」と完敗を認めた。今大会準決勝までは見せられていた、自分たちからアクションを起こすことができなかったことについては「守備の部分でも、いつもなら1歩前に出られるところで出られなかったり、あとはプレッシャーと感じる距離がいつもよりも遠いにも関わらず、メンタル的なのか分からないですけど、ちょっと浮き足だった感じのプレーが特に前半多かったです。ハーフタイムでそれを選手と共有して、もうちょっと自信を持ってやろうと話して、今までやってきたことの確認をした中で後半に入ったのですが、なかなか最後のところまではやっぱり簡単に行かせてもらえなかったなというのが印象です」と大舞台の緊張や、相手の強度、技術の前に、今まで積み上げてきたことを出せなかったと振り返った。

(監督 加藤望)

 キャプテンの永井も「まず1個1個の技術や強度が相手の方が上でしたし、そういう面で負けていたらやっぱり主導権も握れないと思うので、やっぱそこは日ごろの練習からまたやっていかなきゃいけません」、今大会チーム最多3得点の古屋も「最初はビビって蹴ってばかりで自分たちのボールにならず、そのまま押し込まれて、早い時間帯で先制されて、そこで崩れました」と反省を口にし、監督や選手たちからは準優勝に満足するような雰囲気は一切無く、課題を得たことでさらなる高みを見据えていた。

(キャプテン 永井大義(3年))

 監督も選手も誰もがこの敗戦を次につなげるという思いを語ったが、その「次」とはやはりプレミアリーグ参入である。キャプテンの永井は「今回優勝できなかった以上、プレミア昇格というのはもっと意識してやっていかなきゃいけないなと思いますし、またこのチームで歴史を変えたいと思っているので、1回オフを挟みますけど、オフ明けから全員で一つの目標に向かってやっていきたいなと思います」とその大きな目標に向けての意気込みを語った。大会MIPを受賞した渡邊は今、2年生ということもあり、「まずは直近のプリンスリーグは無敗で優勝して、プレミアリーグに昇格するというところと、また来年この舞台に帰ってきて、次は絶対優勝したいなと思っています」とプレミアリーグ参入に加え、来シーズンの今大会優勝に向けても意欲を見せた。
 優勝こそならなかったが、一つ歴史を塗り替えた選手たち。初めての公式戦敗戦を受けて、さらにどのように成長していくのか。今大会で得た自信と課題を糧に、今月末からはプレミアリーグプレーオフ出場に向けた、プリンスリーグ東北での戦いが再び始まる。

(by 小林健志)